ドルコスト平均法って何?


 以前、私は株式投資をやっていました。厳密には、現在も2種類ほど保有していますが、ほぼそのままにしており、「売買をやっている」という状態ではありません。

 株価は、その企業の業績のほか、社会経済の様々な要因に揺り動かされます。安く買って、高く売れればよいのですが、素人ではそうはうまくいきません。結局、ある株式を数十万円、百万円近くで購入し、その後の値動きに日々一喜一憂している状況でした。

 その後、今から10年ほど前にファイナンシャルプランナー2級の資格を取り、その過程で投資信託について学び、「長期」「分散」「積立」という言葉と出会いました。

 特に、「長期」と「積立」に関わる概念としてドルコスト平均法というものがあります。

 ドルコスト平均法は、価格が変動する商品(株式や投資信託、債券など)を、「常に一定額で、定期的に」購入した場合に、全体の平均購入単価を平準化させる効果があり、長期的な資産形成を行っていくうえで有効な手法として知られています。

 具体的には、毎回の投資金額を一定にすることで、価格(投資信託では「基準価額」といいます。)が低いときには購入量(口数)が多くなり、価格が高いときには購入量(口数)が少なくなるため、結果的に平均購入単価を抑えることが期待できるものです。特に長期間になるとその効果が大きいことがわかります。

 私も、ファイナンシャルプランナーの資格を取った翌年2014年に、丁度、少額投資非課税制度(一般NISA)が始まったことを契機に、投資信託の購入を始め、現在までに家族の口座を含め10数種類の投資信託を続けています。

 途中で見切りをつけた投資信託もいくつかありました。また、今年新NISAが始まったので、特定口座の投資信託は積立の購入を停止し、順次、新NISAへの移行を進めています。

 ※特定口座:年間取引報告書を作成してくれます。「源泉徴収あり」を選択していると、売却時に所得税等を源泉徴収してくれるため、申告・納税手続きが簡素化できます。

 投資信託を購入しはじめた当初1~2年ほどは、基準価額の上下動に引きずられ、積立金額(元本)と損益額の合計である総評価額も上下動を繰り返した経緯があります。

 ※基準価額:投資信託の値段のことで、多くは1万口当たりの値段をいいます。その投資信託が保有する株式や債券等の時価総額に利息や配当金等の収入を加え、そこから運用コストを差し引いた金額を総口数で割って算出します。

 その後、4~5年のころからは、損益額もマイナスの方へ振れなくなり、総評価額はすべての商品で増加の傾向に向かい安定しています。

 過去の実績からも、長期に投資した方が、マイナスになる確率が低くなることがわかっています。

 また、ここ数年は、アベノミクスや政府の超低金利政策などにより、市場に多量の資金が流通していることや、米国経済が堅調な伸びを確保できているなどの理由により、良質な投資信託は堅実にプラスへと向かったものと思っています。

 今後も、国内、海外の社会経済状況により、一進一退を繰り返すと思いますが、今すぐ資金が必要ということではないため、気長にコツコツと積み立てていこうと思っています。

ドルコスト平均法について具体的に計算

 以下、ドルコスト平均法について、投資信託を定額購入(毎回、同一の購入額で購入)する場合と定量購入(毎回、同一の購入数量=口数で購入)する場合を比較しながら説明してみたいと思います。

 今回は、比較しやすいように、定額購入、定量購入ともに、同じ商品を同じタイミングで購入し、平均購入数量(口数)が同一となるように設定しています(以下の例では、平均購入数量(口数)を13.5単位とします。)。

⑴ 定額購入

毎回(毎月)10,000円分を購入

1回目  2回目   3回目  4回目  5回目  合計  平均  
購入額(円)10,00010,00010,00010,00010,00050,00010,000
購入単価(円)8001,000800500800740.7
購入数量(単位)12.510.012.520.012.567.513.5

 上表のとおり、購入額が定額なので、購入単価(基準価額)により、毎月の購入数量が変化しています。

 例えば、購入単価が800円のとき、10,000円分を購入すると、購入数量は、10,000円÷800円=12.5単位となります。

⑵ 定量購入

毎回(毎月)13.5単位(定額購入の平均単位)を購入

1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 合計  平均  
購入額(円)10,80013,50010,8006,75010,80052,65010,530
購入単価(円)8001,000800500800780.0
購入数量(単位)13.513.513.513.513.567.513.5

 上表のとおり、毎月購入単位が同じなので、購入単価(基準価額)によって、毎月の購入額が変動します。
 例えば、購入単価が800円のとき、購入数量13.5単位を購入すると、購入額は800円×13.5単位=10,800円となります。

結果の比較

 購入額の
合計 (円)
平均購入
額 (円)
平均購入
単価 (円)
平均購入
数量 (単位)
総購入数量
(単位)
⑴定額購入50,00010,000740.713.567.5
⑵定量購入52,65010,530780.013.567.5

 定額購入及び定量購入したものを、それぞれ、将来単価が1,000円になったときに換金するものとします。

定額購入の場合

 購入数量67.5単位に1,000円を掛けて67,500円になるため、購入するのにかかった購入額の合計50,000円を差し引くと、利益は17,500円となります。

定量購入の場合

 購入数量67.5単位に、1000円を掛けて総額は定額購入の場合と同様に67,500円になりますが、購入額の合計が52,650円であるため、これを差し引くと、利益は14,750円となります。

 つまり、定額購入の方が、定量購入より、この例の場合、17,500-14,750=2,750円利益が多いということになります。

  

5回目に単価が大きく下がってしまったら

 なお、購入5回目に単価(基準価額)が大きく下がってしまった場合などには、損失となることもあります。

 例として、以下のパターンで計算してみます。

定額購入

 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 合計 平均 
購入額10,00010,00010,00010,00010,00050,00010,000
購入単価8001,0008001,000500769.2
購入数量12.510.012.510.020.065.013.0

定量購入

 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 合計 平均 
購入額10,40013,00010,40013,0006,50053,30010,660
購入単価8001,0008001,000500820
購入数量13.013.013.013.013.065.013.0

結果の比較

 購入額の合計(円)平均購入額(円) 平均購入単価(円) 平均購入数量(単位) 
定額購入50,00010,000769.213.0
定量購入53,30010,660780.013.0

 定額購入及び定量購入したものを、それぞれ、単価が500円になった状態で換金するものとすると、・・・

定額購入の場合

 購入数量65.0単位に500円を掛けて32,500円になるため、購入額の合計50,000円を差し引くと、損益額はマイナス17,500円となります。

定量購入の場合

 購入数量65.0単位に500円を掛けて総額は定額購入の場合と同様に32,500円になります。しかし、購入額の合計が53,300円であるため、これを差し引くと、損益額はマイナス20,800円となります。

 いずれもマイナスとなりましたが、定額購入の場合の方が定量購入の場合より、損失額が3,300円少ないということになります。

 そのほか、色々なパターンを試してみても、定量購入の場合よりも定額購入の方が概ねリスクが少ないということがわかります。

 今回は5回としましたが、毎月購入するのであれば、5か月で投資信託を終了するということは稀だと思います。少なくとも数年は続けるでしょう。

 なお、5回目のときに、よほど現金が必要でない限り、5回目で必ずしも売却しなければならないわけではありません。

 また、そのまま購入を継続したり、一旦購入をストップし、そのままの状態で単価(基準価額)が上がるのを待つ(単価が下がっている間に積立てを続けていれば、当然、購入数量は多くなり、有利となります。)という方法もあります。

長期にわたって続けてみたら

 ちなみに、6回目以降も単価が500円で低迷し、20回目にようやくスタート地点の800円に戻った場合について計算してみましょう。

    1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 ・・・19回目20回目合計 平均 
購入額 (円)10,00010,00010,00010,00010,00010,000・・・10,00010,000200,00010,000
購入単価(円)8001,0008001,000500500・・・500800559.4
購入数量 (単位)12.510.012.510.020.020.0・・・20.012.5357.517.9

 購入数量357.5単位に800円を掛けると286,000円になります。購入額の合計は200,000円ですので、差し引き86,000円の収益となります。

 途中で基準価額(購入単価)が低迷していても、その間購入数量を着実に増やすことができるため、売却のタイミングを見計らえば収益を上げられるということがわかると思います。

 要は、「長期」で「積立」ということなのですね。これがドルコスト平均法の特色です。

 ちなみに、これが投資信託ではなく、株式の購入であった場合、当初、株価800円であったものが、途中株価500円程度に低迷し、20回目(20カ月)にようやく株価800円に戻ったとしても、総額=株価×保有株式数であるため、利益はゼロとなります。

 なお、NISAの広告などに、「500円から気軽に積み立てを始められます!」といったフレーズを見かけますが、先ほどの例にもあるとおり、購入数量(単位)がある程度大きくなると利益も大きくなり、実益の実感が得られ、「積立を続けることのモチベーション」が得られることから、あまりに少額の積立はお勧めできません

 
 以上、投資信託の購入について、「長期」「積立」とドルコスト平均法について説明してみました。
 

 「長期」「分散」「積立」のうち、残る「分散」についてはどうでしょうか。
 それについては、また次回。

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