
昨年、私は大学時代に出会った大切な友人を病気で亡くしました。
突然のことで、同窓の皆も、ずいぶんと早い別れに嘆き悲しみました。
そして、それに比較にならないほど、残されたご家族は大きなショックに打ちひしがれ、
さらにその後対応しなくてはならない様々な手続きなどで、大変なご苦労をされたと思います。
私が、老後のことを考え始めたきっかけは、両親の老いと自らの将来への不安でした。
漠然とした将来への不安を少しでも和らげ、家族が安心して暮らせるように。
老後に備え、身のまわりのことを一つずつ整理しておこうと思いました。
そして、私と同様にこれから老後を迎える方にとって、
私の経験や学んだことが少しでもお役に立てばという思い。
今回は、私が亡くなった場合に、妻がどれくらいの遺族年金を受給できるのかを
確認・整理し、Excelを使って試算できるようにしました。
目次
1 遺族年金とは
2 遺族厚生年金の受給要件
3 遺族厚生年金は誰がいくらもらえる?
4 遺族厚生年金の試算
1 遺族年金とは
遺族年金は国民年金又は厚生年金に加入している方(又は加入していた方)が亡くなったときに、
その方によって生計を維持されていた配偶者や子などの遺族に支給される年金です。
国民年金から支給される遺族年金は「遺族基礎年金」、厚生年金から支給される遺族年金は
「遺族厚生年金」と呼ばれます。
それぞれ支給される金額や対象となる遺族の範囲が異なります。
今回は、特に会社員や公務員を対象とした「遺族厚生年金」についてまとめました。
なお、遺族年金ではなく、単純に公的年金の受給予想額を知るには、
毎年誕生日月に送付されてくる「ねんきん定期便」が便利です。
「ねんきん定期便」には、これまでの年金納付状況や現在の加入状況が
60歳まで継続された場合の65歳時の年金見込み額が示されています。
また、年金額の詳細についてシミュレーションしたい場合は、
厚生労働省が作成・公表している以下のホームページをご覧ください。
2 遺族厚生年金の受給要件
遺族厚生年金とは厚生年金保険の被保険者又は被保険者であった方
(会社員、公務員)が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族
が受給できる遺族年金です。
⑴ 「生計を維持されていた」とは
遺族年金の対象となるのは、亡くなった被保険者によって生計を維持されていた遺族です。
そのためには原則として次の2つの条件をいずれも満たす必要があります。
① 生計を同じくしていること
同居している。別居でも仕送りをしていたり、健康保険の扶養親族であるなどの場合には認められる。
② 収入要件を満たしていること
支給の対象となる遺族の前年の収入が850万円未満、又は所得が655万5千円未満である。
⑵ 遺族年金は非課税
遺族年金は非課税です。所得税(及び復興特別所得税)や相続税の課税対象にはなりません。したがって、確定申告や年末調整は不要です。
また、翌年の国民健康保険料や、住民税の計算においても収入には含まれません。
⑶ 遺族厚生年金の受給要件
以下の1.から5.のいずれかの要件を満たしている方が死亡した場合に支給されます。
- 厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
- 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
- 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき
- 老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
- 老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
1.及び2.の要件については、死亡日の前日において、保険料納付済期間
(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。
ただし、死亡日が令和8(2026)年3月末日までの場合は、死亡した方が65歳未満であれば、
死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の
未納がなければよいとされています。
4.及び5.の要件については、保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間
を合算した期間が25年以上ある方に限ります。
出典:日本年金機構ホームページ
3 遺族厚生年金は誰がいくらもらえる?
⑴ 誰がもらえるのか
死亡した方に生計を維持されていた以下の遺族のうち、最も優先順位の高い方が
受け取ることができます。なお、遺族基礎年金を受給できる遺族の方はあわせて受給できます。
<優先順位>
1. 子のある配偶者
2. 子(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で
障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方。)(※1)
3. 子のない配偶者(※2)
4. 父母(※3)
5. 孫(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で
障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方。)
6. 祖父母(※3)
※1 子のある妻又は子のある55歳以上の夫が遺族厚生年金を受け取っている間は、
子には遺族厚生年金は支給されない。
※2 子のない30歳未満の妻は、5年間のみ受給できる。また、子のない夫は、
55歳以上の方に限り受給できるが、受給開始は60歳からとなる(ただし、
遺族基礎年金を合わせて受給できる場合に限り、55歳から60歳の間であっても遺族厚生年金を受給できる)。
※3 父母又は祖父母は、55歳以上である方に限り受給できるが、受給開始は
60歳からとなる。
出典:日本年金機構ホームページ
⑵ いくらもらえるのか
遺族厚生年金の年金額は、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の
4分の3の額です。報酬比例部分は年金の加入期間や過去の報酬(平均標準報酬月額)等
に応じて決まりますが、前述の「遺族厚生年金の受給要件」の1.、2.及び3.に基づく
遺族厚生年金の場合、報酬比例部分の計算において、厚生年金の被保険者期間が
300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。
なお、65歳以上で老齢厚生(退職共済)年金を受け取る権利がある方が、
配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取るときは、
「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と
「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の
老齢厚生(退職共済)年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、
高い方の額が遺族厚生年金の額となります。
<報酬比例部分の計算式>
報酬比例部分=A+B
A:平成15(2003)年3月以前の加入期間
平均標準報酬月額 × 1,000分の7.125 × 平成15年3月までの加入期間(月数)
B:平成15(2003)年4月以降の加入期間
平均標準報酬額 × 1,000分の5.481 × 平成15年4月以降の加入期間(月数)
⑶ いつまでもらえるのか
遺族厚生年金は本人が死亡した日の翌月から支給が開始し、いつまでもらえるかは
受給対象者の年齢や子の有無などによって異なります。
<妻>
子がいる妻、もしくは妻が30歳以上の場合は一生涯受給することができます。
一方で、子がいない30歳未満の妻は5年間に限り受給できます。
<子・孫>
18歳になった年度の末日(3月31日)まで受給することができます。
ただし、障害等級1級・2級の状態にある場合は20歳になるまで受給できます。
<夫>
支給対象となる子がいる場合は夫には支給されず、子に支給されます。
子のない夫は55歳以上の場合に限り、60歳から一生涯受給できます
(ただし、遺族基礎年金をあわせて受給できる場合に限り、55歳から
60歳の間であっても遺族厚生年金を受給できます)。
<父母・祖父母>
55歳以上の場合に限り、60歳から一生涯受給できます。
⑷ 中高齢寡婦加算とは
次のいずれかに該当する妻が受ける遺族厚生年金(※1)には、
40歳から65歳になるまでの間、612,000円(令和6年の年額。
毎年改定されます。)が加算されます。
- 夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子(※2)
がいない妻。 - 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻(※3)が、
子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)等のため、
遺族基礎年金を受給できなくなったとき。
※1 老齢厚生年金の受給権者または受給資格期間を満たしている夫が死亡したときは、
死亡した夫の厚生年金保険の被保険者期間が20年(中高齢者の期間短縮の特例などによって
20年未満の被保険者期間で共済組合等の加入期間を除いた老齢厚生年金の受給資格期間
を満たした方はその期間)以上の場合に限ります。
※2 「子」とは次の方に限ります。
- 18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
- 20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の障害の状態にある子
※3 40歳に到達した当時、子がいるため遺族基礎年金を受けている妻。
※4 平成19年3月31日以前に夫が亡くなって、遺族厚生年金を受けられている方は、
上記1.と※3の「40歳」を「35歳」と読み替えてください。
⑸ 経過的寡婦加算とは
次のいずれかに該当する場合に遺族厚生年金に加算されます。
- 昭和31年4月1日以前生まれの妻に65歳以上で遺族厚生年金の受給権が
発生したとき(上記4および5の受給要件に基づく場合は、死亡した夫の
厚生年金保険の被保険者期間が20年(中高齢者の期間短縮の特例などによって
20年未満の被保険者期間で共済組合等の加入期間を除いた老齢厚生年金の
受給資格期間を満たした方はその期間)以上の場合に限ります。) - 中高齢の加算がされていた昭和31年4月1日以前生まれの遺族厚生年金の
受給権者である妻が65歳に達したとき
経過的寡婦加算の額は、昭和61年4月1日から60歳に達するまで国民年金に
加入した場合の老齢基礎年金の額と合わせると、中高齢寡婦加算の額と同額程度
となるよう決められています。
⑹ 65歳以上の遺族厚生年金の受給権者が、自身の老齢厚生年金の受給権を有する場合
平成19年3月31日までは、原則、どちらを受けるか選択することとなっていましたが、
平成16年の年金制度改正により、平成19年4月1日からは、自分自身が納めた保険料を
年金額に反映させるため、65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受ける権利が
ある方は、老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の
支給が停止となります。
出典:日本年金機構ホームページ
⑺ 在職老齢年金
在職老齢年金制度は、令和6年度の厚生労働省の「財政検証」に基づく年金改革
(5年に一度)において、年金支給を停止する一定の額(現在は、厚生年金と給与
の合計が50万円)を引き上げること(62万円と71万円の案)や、制度そのものの
廃止について議論されています。
なお、65歳以降も働き、年金保険料を納付することによって、毎年、将来の
年金受給額が改訂(増額)されるので、在職老齢年金制度が働く意欲を削ぐとまでは
言えませんが。今後の制度改正等の動向が気になるところです。
4 遺族厚生年金の試算(「ねんきん定期便」を使って)
夫(妻)が亡くなったときに、妻(夫)は遺族年金をいくらもらえるのか、
試算してみます。
お手元に「ねんきん定期便」をご用意ください。
次の「遺族年金シミュレーション(Excel)」をダウンロードし、
<設定例>を参考にして、実際に遺族年金を含めた老齢年金総受給額を計算してみてください。
遺族年金シミュレーション(Excel)
<設定例>
夫(63歳) 会社員
「ねんきん定期便(例)」より、65歳時の年金額等は以下のとおり。
・受給資格期間 456月
・老齢基礎年金 719,100円 a
・老齢厚生年金のうち報酬比例部分 1,356,700円 c
・老齢厚生年金のうち経過的加算部分 46,700円 d
・老齢基礎年金及び老齢厚生年金の合計額 2,122,500円 g
妻(61歳) 会社員として5年間ほど勤務したのち専業主婦
「ねんきん定期便(例)」より、65歳時の年金額等は以下のとおり。
・受給資格期間 479月
・老齢基礎年金 793,300円 l
・老齢厚生年金のうち報酬比例部分 69,400円 + 経過的加算部分 50円 = 69,450円 m
・老齢基礎年金及び老齢厚生年金の合計額 862,750円 n



① 夫の「ねんきん定期便」より、
a(夫の老齢基礎年金)、c(夫の老齢厚生年金のうち報酬比例部分)及び
d(同経過的加算部分)を、妻の「ねんきん定期便」より、
l(妻の老齢基礎年金)及びm(妻の老齢厚生年金のうち報酬比例部分と
経過的加算部分の合計)を、それぞれ、黄色の枠内に入力します。
② 夫が61歳の時の西暦を黄緑色の枠内に入力します。
③ 夫が61歳の時の妻の年齢を水色の枠内に入力します。
入力可能な範囲は56歳から65歳までとします。
④ 在職老齢年金を受給している場合は、その金額を桃色の
枠内に入力します。
⑤ ①から④まで入力すると、自動的にg+n(夫婦の年金受給総額) と、
夫が死亡した後の z (妻の遺族厚生年金を含めた年金受給総額)
が計算されます。
以下の計算例を参考にして、実際に計算してみてください。


在職老齢年金の計算については、私のブログ「年金と在職老齢年金制度」をご覧ください。
いかがでしたか。まさかのとき…遺族はいったいどれくらい年金をもらえるのか。
時間のある時に一度チェックしておくと安心です。
#遺族年金#年金