
1.年金はどれくらいもらえる?
日本年金機構は、令和7年4月1日、
令和7年度の年金額について示しました。
これによると、年金額は前年度から1.9%引き上げられ、
以下のようになるとのことです。
実際には、4月分と5月分を合わせて、6月13日の支払い分から反映されます。

※1 令和6年度の昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額)は、月額69,108円
この場合の満額とは、20歳以降40年間(480ヵ月)の間、保険料を納めた場合の額です。
ちなみに、22歳で就職し保険料を納めた場合、
それ以降通算で40年間保険料を納めるといった場合もあります。
※2 平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45.5万円)で、
40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準
上の表から計算すると、老齢基礎年金が69,308円、
老齢厚生年金は、夫婦2人分の老齢基礎年金を含んで230,784円ですので、
実際の老齢厚生年金は、
232,784-69,308×2=94,163円となります。
意外と少ないことがわかります。
もちろん、夫婦共働きの場合には、これより多くなります。
なお、最終的な年金の実質手取り額には注意を要します。
これまでも国民保険の保険料は毎年見直され、上がり続けています。
また、2000年に始まった公的介護保険の保険料も、
断続的に上がっていることから、
国民年金と厚生年金の額の総額をみても、
実質的な手取りは実は下がるということもありそうです。
加えて、昨今の物価高の傾向。
一時的な給付金の交付ではなく、将来を見据え、
税や保険料を包括する抜本的な制度の見直しを望みます。
2.年金制度改正の動き
少子高齢化が進み、保険料を納める現役世代の人の割合が減る一方で、
年金給付に関わる予算額はますます膨らんでいます。
厚生労働省は昨年(2024年)、年金財政の持続性を点検する
5年に一度の「財政検証」を行い、その結果を公表しました。
これを踏まえて、政府は、2025年の年金制度改正の議論に取り組みました。
中でも注目は、在職老齢年金制度見直しです。
3.在職老齢年金制度とは
厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受ける60歳以上の方は、
基本月額※1と総報酬月額相当額※2の合計
(従来は50万円 ⇒ 2025年4月から51万円に改定)
が一定以上の額となった場合、
年金額が支給停止(全部または一部)されるというものです。
在職老齢年金額=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-51万円)÷2
つまり、基本月額と総報酬月額相当額の合計が51万円を下回れば、
年金の減額はされないということです。
今回、この控除される額が従来の50万円から51万円に改定されました。
※1 基本月額
年金額(年額)を12で割った額。
なお、この場合の年金額とは、年金支給額ではないことに注意!
老齢厚生年金の報酬比例部分をいい、老齢基礎年金は含まない。
下の「ねんきん定期便」の例では、
老齢厚生年金のうち「報酬比例部分」1,345,700円 c にあたります。
月額 = 1,345,700÷12 = 112,141.7円 ≒ 11万円
以下の試算では、この11万円の額を使用します。

※2 総報酬月額相当額
毎月の賃金(標準報酬月額※3)に、
1年間の賞与(標準賞与額。ボーナスが2回の場合はその合計)を
12で割った額を加えた額をいう。
大雑把に言えば、年収を12で割った額
※3 標準報酬月額
毎年、7月1日現在雇用されている事業所において、
同日前3カ月間(4月、5月、6月)に受けた報酬の総額
(通勤手当等を含む)をその期間の総月数で除して得た額。
これを定時決定といい、その年の9月から翌年の8月まで使用する。
例えば、基本月額が11万円で、総報酬月額相当額が46万円の場合、
(11万円+46万円-51万円)÷2=3万円
が本来の年金額の11万円から差し引かれ、
最終的な年金支給額は8万円になります。
この式から分かるとおり、
基本月額が11万円の方で、総報酬月額相当額が62万円の場合には、
(11万円+62万円-51万円)÷2=11万円
となり、年金額は、0円=全額停止となります。
つまり、この場合、給与が62万円以上になると、
年金が全く受給できなくなるということです。
2025年4月から、このように一定の額である50万円が
51万円に引き上げられました。
4.年金が一部停止とならないためには
65歳以降引き続き働く場合について、実際に試算してみます。
「ねんきん定期便」で老齢厚生年金の額がA万円だとします。
年収がB万円だとすると、
年金の支給停止額は(A+B÷12-51)÷2
例えば、A=11万円の場合、支給停止額をゼロとするためには、
(11+B÷12-51)÷2=0なので、
B=(51-11)×12=480万円
つまり、おおざっぱに言えば、年収が480万円以下であれば、
年金の一部停止がないことがわかります。
5.在職老齢年金制度の見直し
高齢者の健康維持と社会の働き手の補充という意味で、
昨今、政府は声高に高齢者の就労を勧めていますが、
在職老齢年金制度は、ある程度の収入があると、
年金そのものを減額してしまうことから、
高齢者の就労意欲をそぐとの指摘もあります。
このため、今後、51万円の控除額をさらに引き上げる、
あるいは、同制度そのものが廃止になれば、
高齢者の就労のモチベーションも一層高まると思います。
もちろん、毎日元気に働いて、健康と収入と遣り甲斐が得られるのであれば、控除額に関わらず、ガンガン働くというのもよいのではないでしょうか。
65歳以上で、給与が480万円。年金と合わせて年収は700万円!
…羨ましがられるかも知れませんね。
なお、将来の給付財源が削られるとの指摘もあり、
現状では、制度廃止は難しそうで、
62万円に落ち着くのではとの声もあります。
でも、62万円でも相当嬉しいですね。