年末調整と確定申告の関係について


 会社にお勤めの方は、毎年秋頃になると年末調整の用紙に必要事項を記入して職場に提出していると思います。

 その結果、最終月12月の給与明細書において、所得税が大幅に減額、あるいはマイナスの金額になっているのを見て、喜ばれた方も多いと思います。

 確かに減額、マイナスの値だと何か得をしたように感じますが、実際のところはどうなのでしょうか。

 実は、毎月給与から天引きされる所得税はあらかじめ多めに計算、徴収されていて、この年末調整による計算の結果、「ひとまず正確な所得税」が計算され、源泉徴収票に「源泉徴収税額」として示されるということになっています。

 ここで「ひとまず正確な所得税」といったのは、次の理由によるからです。

 それは、年末調整を提出する時点ではまだ支出が確定しない場合があり(医療費や寄付金などは、そのあとまだ年内に支出する可能性がある)、それらを含めて必要に応じ2月に税務署へ提出する確定申告で、最終的に正確な所得税が計算されるからです。

 その結果、納め過ぎている場合には還付金として、また、不足している場合には追加の納税として処理されるのです。

 もちろん、多くの方は会社で対応してくれる年末調整で済んでしまいますが、今回は、例を用いて、年末調整とその後行う確定申告との関係について、わかりやすく説明していきたいと思います。

 Excelファイルを開き、画面下段のタブ「年末調整と確定申告」をクリックすると、以下のような画面となります。
(タブ「基本データ」は、あらかじめ一例を入力してあります。)

画面左側には「年末調整(源泉徴収税額と12月の所得税調整額) 給与のみ」が、その右側には、「確定申告時の納付又は還付(年末調整時には確定しなかった項目を加えて申告) 給与その他合計」が確認できると思います。

また、画面右端の垂直スクロールバーをクリックし、そのまま下へ動かす(下へスクロールする)と、「A 給与所得控除」「B 各種所得控除」「所得税」「住民税」「社会保険料」の計算過程が示されています。

再び、上へスクロールしてください。
下図は、画面左側の給与等の収入金額(年収)と控除、所得税、源泉徴収税額との関係を示したものです。(筆者作成)

図からわかるとおり、給与等の収入金額(年収)からまず「A 給与所得控除」を引いたものが「給与所得控除後の金額(給与所得)」になり、さらにそれから「B 各種所得控除」を引くと、課税所得が求められます。

まず、「A 給与所得控除」の額は、給与等の収入金額(年収)に応じ、表1「給与所得控除額の計算」により求めます。

また、課税所得には、表2「課税所得の計算」のように、給与等の収入金額(年収)に応じて、税率控除額が決められていて、それにより、「C 所得税」が求められます。

この所得税に、復興特別所得税率0.21%を乗じた値が「E 復興特別所得税」となり、「C 所得税」と「E 復興特別所得税」を合計したものが「F 源泉徴収税額」となります。

なお、先ほどの図では、計算を簡略化するために、「D 住宅借入均等特別控除」(いわゆる住宅ローン控除)を0円としていますが、Dのローン控除がある場合には、「C 所得税」からDの額を差し引き、その金額に復興特別所得税率0.21%を乗じた値が「E 復興特別所得税」となります。

例では、年収500万円、配偶者と二人の子ども(大学生1人、高校生1人)を扶養している家庭を元に計算しました。

画面を下へスクロールしていただくと、「A 給与所得控除」「B 各種所得控除」「社会保険料」の計算の様子が理解できると思います。

次に、確定申告をする場合の計算と、3.で計算した源泉徴収税額との関係について説明します。

画面下の水平スクロールバーをクリックし、そのまま右へ少しスクロールしてください。下のような図が出てきます。

さて、3.で説明したものとほとんど同じような図であると思いますが、違いがわかりますか。

それは、

「B‘ 各種所得控除」の金額です(それに伴い、課税所得以降の数値も変わっています。)。

なぜでしょうか。
右端の垂直スクロールバーをクリックして、下の方へスクロールしてみてください。

「確定申告時に記入又は変更」(表3)の下の方にある、「㉗医療費控除」及び「㉘寄付金控除」の金額の欄に、今回の例では、それぞれ20,000円が入力されています。

これらは、年末調整時のあとに、年末までの年間の支出としてまとめた金額であるため、確定申告時にあらためて各種所得控除として入力したものです。

この結果、各種所得控除の額が、3.のときには2,587,000円であったものが、4.では、2,627,000円に増額され、それに伴い、課税所得が減り、所得税、復興特別所得税がそれぞれ減ることにより、あらたな「F‘ 源泉徴収税額」が計算されました。

今回の例では、計算を簡略化するため住宅ローン控除がない場合を想定しています。

もしもこの例で「D‘ 住宅借入金等特別控除」の額が21万円(年末の借入金残高が3,000万円の場合、その0.7%)だったとすると、合計約21万円の還付となり、かなりの減税効果となることがわかります。

これまでの説明でもうお分かりの方もいらっしゃるかと思いますが、おおまかに以下のようなことがいえます。

一方で、今回の例では会社員の「給与所得」のみで計算していますが、他に不動産所得雑所得(公的年金や個人年金等)や一時所得(生命保険の一時金・満期返戻金等)などがある場合には、表3の中の「収入金額等」(表中のア、イ事業所得からシ一時所得まで)に収入が加わるため合計所得金額が膨らみ、課税所得の税率分だけ、さらに源泉徴収税額が増えるということになります。

まずは、ぜひExcelファイルをダウンロードし、実際にご自身のデータを入力してみてください。そのうえで、所得控除や給与所得以外の所得を色々と変化させることにより、どのように源泉徴収額が変化していくのかを確認してみてください。
控除のしくみがわかり、節税のポイントなど、あらたに気づく点もあるのではないでしょうか。

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