
大船渡市の山林火災・・・地域の方々のためには勿論のこと、
消防活動をされている方々のためにも、どうか確実に恵みの雨となりますように
岩手県大船渡市の山火事は発生後7日目に入りました。
現地では、地元の消防隊や消防団、自衛隊、
他の区域の消防隊からなる緊急消防援助隊など、
沢山の方々が必至の対応をされていると思います。
そして、今日、ようやく、現地でも雨が降り始めました。
盛岡地方気象台によると、明日にかけて50mmくらいの
降水量が見込まれるようです。
ところで、「50mmの降水量」とは、
一体どれくらいの量の雨のことをいうのでしょうか。
少し計算してみました。
3月5日現在、大船渡市の面積の9%にあたる
2,900ha(ヘクタール)=29k㎡ が延焼中。
1ha(ヘクタール)は100メートル×100メートル
2,900ha = 2,900×100m×100m=2.9×107㎡
また、2,900haは、29×106㎡=29×10002㎡=29k㎡
ここで、少し不謹慎ですが、
大きさをイメージするため、面積を比較してみると、
東京都の新宿区は18.23k㎡、文京区は11.31k㎡ですから、
2,900ha=29k㎡というのは、これら二つの区を合わせた面積に
匹敵する広さだということです。
広大な延焼面積であることがわかります。
<雨量>
1㎡の面積に1時間あたり1mmの雨が降るとすると、
降雨量は、1m×1m×1mm = 1m×1m×1-3m = 1-3㎥
よって、2,900haの山林に1mmの雨が1時間降ると、
その水の総量は、2.9×10の7乗㎡×1-3m = 2.9×104㎥
1 ㎥ = 1t(トン)なので、
延焼区域に満遍なく1mmの雨が降るとすると、
2.9×104 ㎥×1t = 2.9×104t = 29,000t
5時間降ると、29,000t×5 = 145,000 t ・・・①
なお、盛岡地方気象台によると、
6日にかけての降雨の予報では、総雨量50ミリと予想。
50mmは0.05m=5×10-2m
よって総雨量50mmの雨が降ると、
2.9×107㎡×5×10-2m
= 14.5×105 ㎥ = 1,450,000 t ・・・②
<ヘリコプターによる消火と放水量>
現役のころ、今からもう7,8年ほど前になりますが、
八王子の方に勤務していた際、奥多摩や秋川の山林で度々火災が発生し、
最も大きかったもので2ヘクタールほどが延焼した火災に
遭遇したことがあります(今回の29,000ヘクタールというのは、
本当にとてつもない面積規模です)。
その際にも、消防のヘリコプターに加えて、
都知事を経由して自衛隊のヘリコプターにも出動してもらいました。
特に自衛隊の双発型(前後に2つプロペラを持つ)のヘリは
出力が大きく、搬送水量も極めて大きかったことを覚えています。
山林火災でヘリコプターによる消火を試みる際には、
放水する場所の下手には絶対に人がいないように
留意する必要があります。
特に自衛隊機の放水量は非常に威力があり、
山の斜面の上手で放水した際には、大量の水とともに
倒木や大きな石がとてつもない勢いで落下してきます。
奥多摩の山林火災の際にもそうでしたが、
悲惨な二次災害の発生を防止するため、今回の山林火災においても、
自衛隊と消防隊、消防団の間の十分で緻密な連絡・連携体制のもと、
消火活動が実施されているものと思います。
しかしながら、山裾に民家が複数ある今回の大船渡市の
山林火災においては、現地での指揮統制は、
困難を極めていると思います。
大船渡市の山林火災は、5日現在、自衛隊機11機を含め、
ヘリコプター20機あまりで消火活動中とのこと。
ヘリコプター1機がバケット(吊り下げ用の大きなバケツ)
で運べる水の量は、
・陸上自衛隊のヘリコプターで一回あたりの最大の水搬送量は、
「野火消火器材Ⅰ型」で容量約7,500リットル=7.5t
(通常は5,000リットル=5t程度に調節して使用)の大型のもので、
CH-47型というヘリコプターで用いられているそうです。
他のバケットも使用されているようなので、
仮に自衛隊のヘリコプターで1バケット
平均3 t として、11機を投入したとします。
・消防隊のヘリコプターで一度に最大の水搬送量は、
東京消防庁のファイアアタッカーで大型2.7t、中型0.9t。
バケット型で大型1.5t、中型0.5t。
他の消防本部等の様々な消防ヘリコプターも含めて、
仮に平均1tとして、9機を投入したとします。
ヘリコプターが1時間あたり、2回水を運べるとして
(移動や水の補充、給油にかかる時間等を考慮)、
一日の活動を5時間(飛行が危険な早朝や夕方、
給油にかかる時間等を考慮)とすると、
自衛隊のヘリコプター1機で
一日あたり3 t×2回×5時間 = 30t
よって11機なら、330t
消防隊のヘリコプター1機で
一日あたり1 t×2回×5時間 = 10t
よって9機なら、90t
一週間の間、ヘリコプターで水を運んだとして、
(330t+90t)×7日 = 2,940t
よって、
ヘリコプターによる総放水量は約3,000t・・・③
ちなみに、競技用の50mプールの水量は、
50m×25m×2m=2,500㎥=2,500t ですから、
これを少しオーバーするくらいの量です。
よって、
・ヘリコプターによる消火水量は、一週間で③3,000t
・もしも、1時間当たり1mmの雨が5時間降ったら、雨量は、①145,000t
・総雨量50mmの雨が降ると、②1,450,000 t
よって、③:①:②は、およそ1:50:500
やはり、自然の力というものは大きいと
つくづく思い知らされます。
ただし、消防隊の消火はヘリコプターだけではなく、
地上で懸命にホースを延長して消火したり、
背中に放水器を背負って消火に当たっている隊員もいますので、
実際には、この1よりもはるかに多い水量を放水していると思います。
危険な状況の中、対応されている方々には
心から敬意を表しますとともに、
事故やお怪我のないことを心から祈っております。
<ヘリ消火と雨>
〇 ヘリ消火では、延焼中の火元に必ず水を
投下できるわけではないが、狙って投下している。
一方、雨は、延焼区域に降れば、満遍なく水が火元に達するが、
延焼区域を狙っているわけではないため、
肝心な区域に降らない場合がある。
〇 ヘリコプターからの水の放射と、自然の雨では、
水粒の降下中での蒸散状態などは同じではないため、
単純に水量と消火効果は比較できない。
〇 樹上の葉や枝に降り積もってしまう雪よりも、
地面に積もった枯れ葉や枯れ草に直接降りかかる雨の方が
消火の即効性は高い。
○ 雨が満遍なく降れば、現在ヘリコプターによる散水が
行われていない燃えていない区域についても、
予防的に地面や枯葉などに保水させることができる。
〇 消防活動では、ヘリコプターによる空中消火のほか、
地上で消防ホースによる消火や隊員が直接火種に
消火水を吹き付ける背負い式消火水のうを
活用した懸命な消火活動が続けられている。
〇 今後、雨や雪による消火が進めば、
隊員の戦力をより効果的に人命救助や避難誘導、
火種の確認などに充てることができる。
しかしながら、経験上、雨が降った場合は、
降雨による足元のぬかるみや斜面の崩落、
土石や倒木の落下など、逆に活動を困難にする
新たな課題の発生についても懸念されます。
また、今後は再燃火災を防ぐことも重要となります。
山の奥深くに分け入り、火種が無いことなどを
確認することが必要であることを考慮すると、
鎮火の判断までには、まだ相当な時間が
かかるものと思われます。
ちなみに、消防活動で、
鎮圧とは、火勢が消防隊の制御下に入り、
拡大の危険がなくなったと判断された状態
(完全に火が消えたわけではないものの、
勢いはかなり弱まった状態)をいいます。
一方で、鎮火は、完全に火が消え、
消火活動の必要がないと判断される状態をいい、
この点からも、鎮火には、まだ相当な時間が
かかるものと思われます。
今も現場で、懸命に活動されている消防団、
自衛隊、消防隊、ほか活動されている皆さまが、
ぜひ、無事に活動を終了されること、
そして、東日本大震災の惨禍に遭遇し、
さらにまた、今回の山火事で家を失ったり、
避難等を余儀なくされている地域の住民の方々に、
一刻も早く安寧のときが訪れることを
本当に心から願っております。
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#山林火災