
東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)
JR山手線目黒駅近くにありながら、
森に囲まれた閑静な場所に佇む、
アール・デコ様式の傑作
として知られる美術館です。
この建物は現在の美術館の姿となるまで、
時代の潮流とともに、
幾重もの歴史を紡いできました。
〇朝香宮家が過ごした邸宅としての14年間
〇吉田茂元首相が政務の場として活用した7年間
〇国の迎賓館として、数々の国賓をもてなした19年間
〇民間の催事施設として、多くの人々に開かれた7年間
〇美術館として42年目
現在、建物公開2025「時を紡ぐ館」を開催中。


庭園内には数多くの植物が植えられていて、
四季折々の花や実を愉しむことができます。



1933年(昭和8年)に
朝香宮(あさかのみや)邸として建設。
当時フランスで流行していた
アール・デコ様式を大胆に取り入れ、
日本の建築史においても
非常に重要な位置を占めています。
建物に一歩足を踏み入れると、
その洗練されたデザインと
上質な素材に目を奪われます。


幾何学的な文様、
曲線を多用した装飾、
そして光を巧みに取り入れるための
大きな窓など、アール・デコの
あらゆる特徴が随所に見られます。
特に、正面玄関のガラスレリーフや、
各部屋のシャンデリア、壁面の装飾、
そして当時の最先端技術であった
暖炉や照明器具に至るまで、
細部にわたるこだわりが感じられます。






これらは、フランスの画家、
イラストレーター、そして
装飾美術家であったアンリ・ラパンが
非常に重要な役割を果たしているそうです。
東京都庭園美術館においては、
建物全体のアール・デコ様式を統括し、
香水塔のほか、1階の大広間、大客室、
大食堂などの内装デザインを手掛けています。
日本の伝統的様式の
「青海波(せいがいは)」を取り入れたのは、
宮内省内匠寮(くないしょうたくみりょう)。
宮内省所管の建築、造園、土木などの
設計管理を司る組織だそうです。



そして、フランスのアール・デコを
代表するデザイナー、ルネ・ラリックが
手掛けたものも多く、
その芸術性の高さに圧倒されました。
ルネ・ラリックの宝飾やガラス工芸は、
以前、箱根のラリック美術館で
知っていましたが、今回のように、
実際の建物に様々な装飾がなされているのを
目の当たりにしたのは初めてです。



レオン・ブランショも、アール・デコ様式を
代表する旧朝香宮邸の内装デザイン
において重要な役割を担いました。
特に、大広間の大理石レリーフ
《戯れる子供たち》や、
大食堂の壁面の植物模様のレリーフが
彼の作品として残されています。



また、この日特に感銘を受けたのは、
マックス・アングランという
画家・ガラス工芸家。
この邸宅では、大客室や大食堂の扉の
エッチング・ガラスを製作しました。
美術館の案内係の方に聞いたところ、
製作当時の彼の年齢は
なんと25歳だったそうです。

なぜその若さで抜擢されたのでしょう?!
きっと若いながらも凄い才能と実績
が評価されていたのでしょうね。
実際にその繊細でモダンな
ガラス細工を見てみると、
現代でもそのまま通用するような
斬新なデザイン。感動しました!
東京都庭園美術館という名前から、
私は、広い庭園に、
様々な美術品が展示されている、
あの箱根の彫刻の森美術館のようなものを
想像していました。
庭園に美術品が点在しているような。
建物そのものや庭園も
もちろん素晴らしいですが、
特に、内装や装飾品は必見!
感動!来たかいがありました。
朝香宮邸が建設された背景には、
朝香宮鳩彦王(あさかのみややすひこおう)、
允子王妃(のぶこおうひ)の存在が。
ご夫妻がパリに滞在中の
1925年に開催された
「現代装飾美術・産業美術国際博覧会」、
いわゆる「アール・デコ博覧会」に
強い影響を受けたそうです。
帰国後にその様式をこの自邸に
取り入れたという経緯があります。
設計は宮内省内匠寮
(くないしょうたくみりょう)
の技師たちが手掛けました。
ご夫妻の意向が強く反映され、
当時の日本の技術と西洋の美意識が融合した、
他に類を見ない建築となりました。
戦後、建物は一時的に、
当時外務大臣で後に総理になる
吉田茂大臣の公邸として使用されました。



かの「サンフランシスコ平和条約」を
締結した吉田総理。
犬を三匹飼っていたそうで、
つけた名前が「サン」「フラン」と
上の写真の「シスコ」
やはり条約には、相当な思い入れが
あったのでしょうね。
その後、赤坂迎賓館が開設されるまで、
白金迎賓館としても使用され、
時を経て、1983年(昭和58年)に
東京都庭園美術館として開館。
美術館としての役割を果たす現在でも、
単に美術品を鑑賞する場としてだけでなく、
建物そのものが一つの芸術作品として
来館者を魅了し続けています。
庭園美術館の魅力は、
建物内部だけにとどまりません。
広大な庭園には、
日本庭園(茶室まであります)、
西洋庭園、そして芝生広場が広がり、
四季折々の美しい表情を見せてくれます。





もみじが綺麗な季節にも、
もう一度訪れてみたいなと思いました。
建物と庭園が一体となって織りなす空間は、
訪れる人々に静かで豊かな時間を提供しています。
アール・デコの優雅な世界観を
現代に伝える貴重な文化遺産ですね。
その歴史と、細部にまで宿る建築家や
美術家たちの情熱、
そしてかつての宮家の生活に
思いを馳せながら、空間を堪能しました。
とてもとてもお勧めです。
<情報>
東京都庭園美術館
東京都港区白金台5-21-9
JR山手線目黒駅 目黒通りを東へ徒歩7分
都営三田線、東京メトロ南北線白金台駅 目黒通りを西へ徒歩6分
オマケ
さすが港区白金台(しろかねだい)
美術館近くにあった
量販店ドン・キホーテの看板も
白金=プラチナ色でした。
