
空気が少し冷たい上野の森
楽しみにしていた
東京国立博物館「運慶展」




鎌倉時代を代表する仏師・運慶の
彫像・造形美を堪能してきました
実は、2年半前に奈良を訪れた際にも
一度、運慶の彫像は観ています
その時は、偶然、興福寺北円堂の
特別開扉の日に遭遇し、たまたま
実際に観ることができたのでした


今回、東京で展示されるというので
あらためてもう一度ゆっくりと…
世界遺産・興福寺は、710年の平城遷都の際
現在の地に誕生し、1300年余の時を重ねています
境内の北西に位置する北円堂
創建者である 藤原不比等(ふひと)の追善のため
721年に建立されるも、1049年の火災
そして、1180年の平氏による南都焼き討ちで
二度にわたって焼失
その後、復興には長い年月が費やされ
1210年頃にお堂が完成
造像は氏長者(うじのちょうじゃ)
近衛家実の命により運慶一門が手がけ
1212年頃、北円堂の諸仏が再興されました
東京国立博物館は、ランニングで
よく敷地の前を通るものの
博物館の建物に入るのは久しぶり


ひんやりとした空気の中に佇む
東京国立博物館
どこか厳かな気配が漂っています
否が応でもワクワク感が高まります
館内に入ると大勢の来館者
特に外国人が目立ちます

淡い照明に包まれた展示室に入ると
そこには
運慶の彫刻たちが静かに佇んでいました
<興福寺 運慶の代表作>
当然ながら、展示室内は撮影禁止だったので
購入した絵葉書で紹介します
北円堂
・弥勒如来坐像

奈良の興福寺北円堂で観た際には
如来座像には光背※がありましたが
今回は光背が外されていたため
後ろに回ると、背中や腰つきの様子を眺める
ことができます
ありがたみのある表情でした
※光背:仏像の後ろにつける
光明(こうみょう)をかたどった装飾
後光(ごこう)
・無著菩薩立像(兄、写真右)
と世親菩薩立像(弟、写真左)

運慶が制作した「木造無著・世親立像」は
鎌倉時代の傑作で
彫像彫刻の最高傑作といわれています
展示室の解説には
「兄 無著(むじゃく)の老獪さと
弟 世親(せしん)の若い力強さ
との対比を楽しんでほしい」
と書いてありました
また、当時まで考えられなかった
目の玉を入れる技法 玉眼(ぎょくがん)
木彫の仏像の目に、水晶やガラスの
レンズを内側から嵌め込み
よりリアルな輝きや生命感を与える技法
平安時代末期から見られ
鎌倉時代に一般化し、仏像の表現が
写実的になる一因となったのだそう
そして彫刻の写実性とたくましい量感
筋肉の張り、目の光、唇の緊張感
――どの細部にも命が宿っているよう
中金堂
以前奈良・興福寺を訪れた際には
あいにく中金堂は改修中で観覧不可でした
でも今回は、じっくり彫像を回り込んで
観ることができました
・増長天、広目天、多聞天、持国天
いわゆる四天王像です




四天王立像に見られる腰のひねりは
三屈(さんくつ)又は三曲(さんきょく)
と呼ばれ、S字の曲線的な立ち姿が素敵です
インドの美術様式が仏教とともに伝わったもので
仏像に人間らしい優美さや柔らかさを
与える表現技法だそうです
圧倒的な存在感の仏像たち
生命を宿す木の力
一本の木から、これほどの生命感を
引き出す技に、ただただ圧倒
どの仏像も、見る角度によって
表情が変わるのが印象的
優しさと力強さ、静けさと情熱
――そのすべてが一体となって
観る者の心を静かに揺さぶります
千年以上前に“人の手”で彫られた
とは思えないリアルさに
ただただ見入ってしまいました
木彫技法を解説するコーナーには
「木の割れ目を生かし、木の内側から
『形を掘り出す』ように作る」
とありました
――ものづくりの原点を
見たような気がしました
私も
「一枚の紙の中から
『対象を浮かび上がらせる』ように描く」
そんなふうに絵を描けたらいいなぁ
以前の奈良旅行の時とは
また違った感覚で「造形美」を堪能
千年を超えてもなお人の心を動かす
運慶の超絶な技巧に触れた
素晴らしいひとときでした
<情報>
東京国立博物館
場所:東京都台東区上野公園13-9 JR上野駅公園口徒歩3分
期間:2025年9月9日(火) ~ 2025年11月30日(日)
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