ヒロブログ 歳刻を愉しむ

人生100年時代の後半を愉しむために


13. 東京都美術館「アンドリュー・ワイエス展」


静寂と写実の極み。東京都美術館「アンドリュー・ワイエス展」で響き合う光と影に浸る

朝ランのお気に入りコースの一角
上野公園にある東京都美術館へ足を運んできました

お目当ては、20世紀アメリカの写実主義を代表する
巨匠アンドリュー・ワイエスの作品群
『アンドリュー・ワイエス展』です

絵を描くことが好きな私にとって
彼の卓越した描写力と独特のカラーパレットは
いつか間近でじっくりとその息遣いを感じてみたい
そんな憧れのものでした

心に刺さった作品をいくつか紹介します
(絵画は写真撮影禁止のため、購入したポストカード)

◆ 開館100周年の節目を迎える、お馴染みの赤レンガへ

まずは美術館の入り口から

(左)大きなガラス窓に掲げられた、本展のメインビジュアル
(右)東京都美術館といえば、この鮮やかな赤レンガと、青空を映し出す球体のオブジェ

いつ訪れてもホッとする上野の東京都美術館ですが
壁面には「開館100周年」の大きな幕が

そんな記念すべき節目に
ワイエスの大規模な展覧会が開催されるなんて
アートファンとしてはそれだけで胸が高鳴ります

◆ 孤高の画家、アンドリュー・ワイエスの眼差し

窓辺に佇むアンドリュー・ワイエスのポートレート
「孤高、厳格」というイメージが伝わってきます

ワイエスは、生涯のほとんどを
故郷ペンシルベニア州と
夏を過ごすメイン州の2つの場所だけで過ごし
身近な風景や親しい人々だけを
描き続けた画家です

このポートレートに見られる
渋く深いモノトーンの世界観は
そのまま彼の絵画のベースにある
「ストイックさ」を物語っているようでした

ワイエスの作品には、常に「生」と「死」
そして「衰退」と「不在」の気配が
漂っているといいます

父親の突然の死…ワイエスに多大な芸術的
精神的な影響を与えていた父親(著名な
挿絵画家のN.C.ワイエス)が、線路の上の
自動車事故で突然この世を去り
この悲劇を境に、ワイエスの作風は
一変したといいます

彼はのちに「父の死によって
私は一人の画家になった
それまでただの彩色だったものが
本物の絵の具(表現の手段)になったと語っています

◆ 息をのむ写実。光と影が織りなす「窓」と「扉」の世界

展示室を進むと、一枚一枚の絵が放つ
圧倒的なディテールと、カサカサとした
乾いた質感に言葉を失います

クリスティーナ・オルソン(テンペラ)

彼の重要なモチーフである
クリスティーナ・オルソンを描いた一作
アンドリュー・ワイエスの代表作です
扉から差し込むシャープな光の表現が見事

明るく差し込む陽の光が
木目の質感や彼女の髪の毛一本一本
そして外に見える荒涼とした草むらを
容赦なく照らし出しています

一見すると写真のようですが
近づいて見ると、執念とも言えるほど
細やかな筆跡で紡がれているのが分かります

灯台(テンペラ)

灯台の内部でしょうか。螺旋階段へと続く扉の手前に佇む白い犬

こちらの作品も、白を基調とした
静謐な空間表現が圧巻です

奥の階段を照らす柔らかい光と
手前のフローリングの陰影

そして中央に座る犬の、まるですべてを
見透かしているかのような佇まい

私も絵を描きますが
「どうすればこれほどまでに澄んだ光と
影のコントラストが表現できるのだろう」と
しばしキャンバスの前に佇んだままに

◆ 水彩・テンペラで描かれる、引き算の美学

(上)『表戸の階段に座るアルヴァロ』。大胆なモノトーンの滲みが、建物の歴史を感じさせます
(中)『粉挽き場』。冬の寂涼とした空気感が、アースカラーの色調から伝わります。
(下)『オルソンの家』。雪原の中にぽつんと佇む家。余白の美しさが際立つ水彩画。

ワイエスといえば、古典的な技法である
「テンペラ画」のイメージが強いですが
自由で即興的な「水彩画」や
「ドライブラッシュ(掠れた筆使い)」
作品も素晴らしい見どころです

特に『オルソンの家』をはじめとする風景画は
色数が極限まで絞られています

茶褐色、グレー、そして紙の白

この限られたアースカラー(大地の色調)だけで
冬の冷たい空気や、建物の木肌が持つ重み
さらにはそこに流れる寂寞とした時間までをも
描き出しています

「描き込みすぎず、しかし本質を写し取る」

この引き算の美学と写実の融合は
絵を描く方だけでなく
現代の忙しい日々に少し疲れを感じている
すべての人に、深い癒やしと心地よい緊張感を
与えてくれるはずです

◆ おわりに:ぜひ、上野で「本物の静寂」に出会ってみてください

図録や画面越しでもワイエスの凄さは伝わりますが
やはり「本物の絵の具の重なり」や
「光の粒子」は、美術館の展示室でしか味わえません

鑑賞を終えて外に出たとき
いつもの見慣れた上野の景色が
少しだけワイエスのフィルターを
通したように愛おしく、深いものに見える
――そんな素敵な魔法にかかった展覧会でした

開催期間は 2026年4月28日〜7月5日 まで

新緑が美しいこの季節、ぜひ東京都美術館で
ワイエスが遺した美しき記憶の数々に
触れてみてください

本当におすすめです!

#アンドリュー・ワイエス

#アンドリュー・ワイエス展

#東京都美術館

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